今春着任された澤田裕美先生に聞く、「跡見のキャリア教育」の展望とは

マネジメント学科特任准教授として2025年4月に本学に着任された澤田裕美先生は、航空会社勤務を経て、長年キャリア教育の研究と実践に取り組まれています。お子さんがまだ小さい時期に大学や大学院で学び直し、「今しかできないことは断らない」と心がけ、さまざまな仕事や地域活動などに携わり、人との出会いを広げてこられました。今年度以降、キャリア教育を跡見の学生にどのように展開していこうとされているのかを伺いました。
🔶大学を出てからの10年間の経験と人脈が大事
──女性が働くうえで考えておくべきこと、必要なことは何でしょうか
女性には結婚、出産といったライフイベントがあり、日本人女性の場合、初産は平均して30.9歳です。ということは、大学を卒業してからの約10年間は、経験と人脈を作る大切な期間になります。仕事を中断することがあっても、正規、非正規を問わず働くというときに、その経験と人脈は大事な要素になります。なので、最初に勤める会社を選ぶ就職活動(誰と働くか)が、より重要になると考えています。
また、デジタル技術が発達した時代に生まれ、情報や知識が過剰に溢れる世界で育った学生たちには、社会人としての常識やマナーを身につけることも必要です。今のような先が見通しにくい世の中だからこそ、既存の常識やマナーをいったんはきちんと身につけることが大事ではないでしょうか。例えば、社内の福利厚生制度を利用するにも組織内で良好な人間関係の構築が欠かせません。これまで指導してきた学生からは、社会にでる前にマナーを修得できてとても感謝しているとの声を聞きます。
🔶授業では「社会人基礎力」をしっかりと伸ばします
──跡見ではどのようなキャリア教育に取り組まれますか
大学の前後にある高校と社会をつなげた「高大社接続」のキャリア教育の研究と実践にこれまで取り組んできました。70校を超える高校を訪問し、高校におけるキャリア教育の実態をヒアリングし、40社以上の企業経営者や管理職の方々とお会いし、社会に求められている人材について意見交換を重ねてきました。そうした研究をもとに跡見では実践的なキャリア教育に取り組んでいきたいと思います。

澤田先生の著書『20歳のキャリア術』。人生100年時代において20歳までに何を身につけるべきか、女性のキャリア形成術をまとめた一冊。1・2年次の「女性のライフプラン」の授業で使用
1・2年次の「女性のライフプラン」の授業では、女性の就労環境や組織文化など、自分を取り巻く環境や社会全体のことをしっかりと学び、自覚することを目指します。3年次からの「女性のキャリア開発」の授業では、この10年間続けてきた老舗企業と連携した能力開発を踏まえ、ホスピタリティ精神やマネジメント感覚などを学ぶことで、キャリア形成を支える基礎的な能力(経済産業省が提唱する「社会人基礎力」)を伸ばします。
就職活動をサポートする就職課主催の「面接対策講座」では、緊張感を持って練習に臨んでもらいたいので、リクルートスーツにパンプスで参加してもらいます。指導が厳しいと思われるかもしれませんが、身だしなみを整えることは他者からの信頼を築くための基本です。本番さながらのスタイルで取り組めば、実際の面接で緊張が和らぎ、本来の力を発揮できるようになります。
就職実績のある企業が、「また跡見の学生を採用したい」と思ってもらえるような卒業生を社会に送り出したいです。社会で貢献できる、きちんとした学生を育てることが、大学の社会的価値を上げることにつながると思います。

授業で生き生きとプレゼンテーションする学生たち、これも女子だけの環境だからこそ
──跡見の学生の印象と授業を通して学生に伝えたいことを教えてください
跡見の学生はみなさん、素直です。その素直さが社会で活きるように指導できたらと思います。どの企業も即戦力を求める傾向が強まり、新入社員教育や社内研修にかける時間と費用が少なくなりました。その分、大学のキャリア教育に期待する企業が多いのです。社会人としての常識やマナーを重んじ、学ぶチャンスがあるのが伝統ある女子大学です。「学んで無駄なことはない、その後の人生にすべてつながるものだ」と思って身につけてほしいと願っています。
──最後に大学以外でのキャリア支援やホスピタリティ関連の活動を教えてください
文部科学省後援の「秘書技能検定」準1級の審査員を約20年担当しています。また、上場企業の接遇コンテスト審査員や、キャリアや女性活躍に関する講演、千代田区の経済団体が主催する新入社員研修も毎年担当しています。こうした活動は、私自身が新入社員の視座を養い、企業側の期待や悩みなどを知る機会になっています。
🔶女子の社会人基礎力を高める研究成果で学会奨励賞を受賞
澤田先生は、前任校で10年間にわたって取り組んだ研究テーマ「老舗企業と連携したPBL(課題解決型学習)」で、女子大生の社会人基礎力を高める研究成果が評価され、今年6月に開かれた日本ビジネス実務学会全国大会で学会奨励賞を受賞されました。澤田先生の同賞受賞は2017年に次いで2度目になります。
🔶「自分らしいキャリアとは何か」を考える特設ページはこちら
https://www.atomi.ac.jp/univ/faculty2020/new_educational_curriculum_career_2025/