【観光コミュニティ学部】文京区長が講師を務める「ぶんきょう学」 地域の課題や活性化策を区長とともに考察
跡見学園女子大学がキャンパスを構える東京都文京区。
約23万人が暮らすこの区の行政トップである成澤廣修文京区長が、本校で授業を受け持っていることをご存じですか。兼任講師として水曜3限に、観光コミュニティ学部3、4年生の選択科目『ぶんきょう学』を教えています。初夏の風が心地よい5月15日、成澤区長を先導に7名の受講生が、本学周辺の茗荷谷コミュニティを探索するフィールドワーク実習がありました。
文京区は江戸時代、幕府により湯島聖堂(昌平坂学問所)が設置され、明治初期から現在に至るまで多くの高等教育機関が集積しました。跡見学園もその一つです。そこで学んだ人たちによる文学作品も数多く誕生しています。そうした「文の京(ふみのみやこ)」としての歴史や文化を知り、フィールドワークを通じてこの地域がさらに活性化するには何が必要かを考えるのが『ぶんきょう学』です。7月の最終講義で学生たちは成澤区長に向けて地域振興策を提案します。
15日のフィールドワークで最初に訪れたのは、お茶の水女子大学が運営する文京区立のこども園です。子育て支援や質の高い幼児教育を実践しようと日本で唯一、国立大学の敷地内に区立幼児施設を設置したいきさつを成澤区長が紹介しました。
続いて、日本人初のオリンピック選手としてマラソンに出場した金栗四三が履いた「金栗足袋」のメーカー・播磨屋跡地を訪ね、明治から大正にかけての和風建築の高い技術を伝える国指定重要文化財の旧磯野家住宅(銅御殿)などを約1時間半かけて巡りました。
中でも時間を取って見学したのは、大塚にある銭湯「大黒湯」。「せっかくだから」と日ごろは入れない男湯に、大黒湯ご主人の岡嶋登さんが招き入れてくれました。
4月には、菜の花やサクランボの香りの入浴剤を入れたお湯を日替わりで楽しんでもらったことや、日曜に朝湯を始めた区内の銭湯が開店前に行列ができる人気だという話などを教わり、銭湯が現代のコミュニティにどのような役割を果たしているのか、学生たちは考えるヒントを得ていました。
訪ねる場所で熱心に写真を撮っていた観光デザイン学科の3年生は、「1、2年では新座キャンパス周辺のコミュニティを学ぶ『むさしの学』を取ったので、後期課程は『ぶんきょう学』を取りたいと思っていました。文京区長に直接教わることができる貴重な授業だと思います」と語っていました。
成澤区長の『ぶんきょう学』は2017年度から始まり今年で8年目。毎年、年度初めには真っ先に本学の授業スケジュールを入れ、その時間帯に公務が入らないようにしているそうです。区長の名刺には「跡見学園女子大学兼任講師」と記されていました。
成澤区長に学生たちに何を学び取ってほしいかを尋ねると、こう答えてくれました。
「キャンパスのある文京の地で2年間過ごすのに、駅と大学との往復だけではもったいない。その地域に住む人の息吹や、そこに残された歴史や文化を感じてもらいたいと思い、授業を続けています。大学を出て就職したり、家庭を持ったりして、自分で生活する場所を決めるときが来ます。そんなときにコミュニティに必要なものとは何かを考える参考になればと思います」