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2021年3月19日
大学

【卒業式学長式辞】どんな未来にでも、美しく生きていける人へ

 

跡見学園女子大学学長    笠原清志

 

本日、跡見学園女子大学を卒業される学部生979名、大学院生13名:総計992名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、今日の卒業式を迎え、ご家族及び関係者の皆様の喜びには一入のものがあると思っています。ご息女の入学以降、ご家族及び関係者の皆様よりいただいた数々のご支援に対し、大学を代表してお礼申し上げます。

 

1)卒業式・修了式を迎えて

一昨年の12月末、コロナウイルスの報道は ありましたが、それは中国の遠い一都市での出来事であり、日本の私たちの生活にはあまり関係のないことと思われていました。それが2ヵ月半後にはコロナウイルスは世界に拡散し、日本でも緊急事態宣言が発出され、経済、社会活動でも深刻な状況になってしまいました。私たちは予測できない未来にたじろぎ、言葉では表現しにくい漠然とした不安に襲われています。

授業はすべてオンライン授業になり、教師はパソコンに向かいキーボードを叩き授業の準備をし、学生の皆さんは自宅や下宿の部屋で、一人でひたすら課題に取り組むといった一年間だったのではないでしょうか。また、対面授業もなく、友人と語り合うこともなく、大学生活のかなりの部分が消滅してしまった一年であったと思います。就職活動も困難な部分が多かったのではないでしょうか。そして私たち教員にとっても、改めて教育の本質とは何か、跡見学園女子大学の教育のあり方とは何か、と言うことについて考えさせられた一年でした。

卒業式・修了式は、学生生活を終えて新しく社会に旅立つ際の通過儀礼といったものです。当日は、髪型を整え袴や着物などでもう一人の自分を精一杯に演出し、式の終了とともに学生生活はこれで終了し、明日から社会人になることを決意します。通過儀礼とは、日常から離れて非日常を経験し、再び新たなる日常へと戻っていく重要なプロセスです。

幸いにして、今年はご家族や関係者の方々には参加を遠慮していただき、二部制にして卒業式・修了式を挙行することができました。しかし、皆さんは学生生活の最後の年をこのような形で過ごし、何かを置き忘れているような気持ちがあり、「学生生活もこれで終わり、これから頑張るぞ」といった気持の整理ができにくくなっているのではないでしょうか。

 

2)「美しく生きる」とは

跡見学園の学祖、跡見花蹊先生は江戸から明治への時代の転換点において、「日本文化の教養を理解し、凛とした美しさを持った女性」、「自律し自立した女性」の育成を目指して女子教育をスタートさせました。この「自律し自立した女性」とは自らを律し、自らによって立つ、という意味で、100年以上を経過した今日でも重要な、そして多くの示唆を私たちに与えてくれます。

卒業する皆さんには、コロナによるこの厳しい状況、そして社会の閉塞状況の中でも「どんな未来にでも美しく生きて」いってほしいと思っています。ここで言う「美しく生きる」ということは、外見的に容姿が良いと言った意味ではありません。しっかりとした教養を持ち、その立ち居振る舞いと生き方が「美しい」という意味です。そもそも、教養とは多くのことを知っているという意味ではありません。真の教養とは、「自分を見つめるもう一人の自分を持つ」ということではないでしょうか。何が起こるのか予測できない時代、つまり不確実性の時代にある私たちは、今まで以上に真の教養を身につけ、自らの力によって生きていかねばなりません。

コロナウイルスは、多くの不幸と不都合をもたらしました。しかし、その都度、人も社会も変化して対応し乗り越えてきました。私たちは今こそ、自分を見つめ、そして自らの生活がこんなにも多くの人たちによって支えられたものである、ということを自覚する必要があるのではないでしょうか。

 

3)母校を巣立つ皆さんへ

跡見学園の歴史と文化の中には、人と人とを自然に結びつけ、そこに新しい可能性を生み出す不思議な力があるように思います。卒業した後、生活や仕事に迷った時、新座キャンパスや文京キャンパスを訪ねてきてください。偶然、ゼミの先生に出会うかもしれません。また、キャンパスを散歩するだけでも、頑張った学生時代を思い出し、元気をもらうことができるかもしれません。跡見学園女子大学での学生生活は、卒業しても永遠に皆さんの心の中にあり、心の支えとなってくれるものと確信しています。

 

令和3年3月17日、母校を巣立つ皆さんの未来に大いなる幸あれと祈念し、挨拶に代えさせていただきます。ご卒業おめでとうございます。