【観光デザイン学科】夜景評論家の丸々もとお氏が「夜景観光」の現在と未来を語る特別講義

観光デザイン学科の臺純子教授による6月11日の「観光コンテンツ」の授業で、「日本の『夜景』の魅力から、『夜景観光』の観光市場の現在と未来」と題した特別講義がありました。
講師は、一般社団法人「夜景観光コンベンション・ビューロー」代表理事で夜景評論家の丸々もとお氏です。観光資源としての「夜景」にいち早く着目し、その魅力を紹介する著書は70冊に上ります。自治体や企業を対象に、夜景観光による地域活性化や集客のコンサルティングをするほか、「工場夜景」の魅力を広めたことでも知られた方です。
授業の冒頭で丸々氏は約80名の履修生に、「夜景の定義とはなんでしょうか」と問いかけました。答えとして4つの選択肢を示し、学生の手が一番多く挙がったのは「夜のにぎわい」でしたが、正解は「夜のけはい」。
「夜の気配が感じられれば夜景なので、浴室の電気を消してアロマキャンドルを焚いて入浴するのも、『夜景』の楽しみ方の一つです」と、夜景の定義の広さを紹介。また、「百万ドルの夜景」や「三大夜景」は日本発のネーミングで、観光需要を促すために旅行会社が広めたとされること。古くから続く夜祭りや送り火など、人々に癒しとエネルギーを与える夜景観賞が、日本には文化として根付いていることを説明しました。

丸々氏が語る夜景観光の魅力に聞き入る観光デザイン学科の学生たち
今では予約が取りづらい人気ツアーとなった工場地帯の夜景観光。丸々氏が初めて自治体に提案したときは、「だれが見に来るの?」と相手にされなかったそうです。観光コンテンツとしてヒットした理由について丸々氏が挙げたのは、「想像力をかきたてられる」ことでした。「SF映画で描かれた近未来のようだとか、人間の血管や臓器のように見えるとか、見た人の想像が言語化され、SNSで発信されて人気が広がりました」
夜景を目的とする観光は、宿泊しないと楽しめないため、その土地にお金が落ちる経済効果を生み出します。夜景による観光活性化事例として自身が手がけた長崎市の取り組みでは、稲佐山から見下ろす長崎市街地の夜景を観光資源として盛り上げるために、自治体と連携してどのようなことに取り組んだのかを説明。その成果として2012年に「世界新三大夜景」の認定を受けたことで、翌年には推計150億円の経済効果があったことを紹介しました。

世界各地の夜景を紹介する丸々氏(写真はブラジル・リオデジャネイロ)
授業の最後には、ニューヨーク、ロンドン、パリ、リオデジャネイロ、香港、シンガポールなどの世界各都市の夜景写真を紹介。「治安の良い日本ほど、安全に夜景観光が楽しめるところは世界で他にありません」と丸々氏。夜景観賞は日本特有の観光資源であると言います。
「夜景観光やイルミネーションの仕事に携わる人の大半は現在男性です。女性のセンスや感性が求められている明かりの世界に、ぜひ興味を持ってほしい」と、観光デザイン学科の学生たちに呼びかけていました。
講義を終えた丸々氏は、「メモを取りながら聞いている学生さんもいて積極性を感じました」と跡見生の感想を語っていました。受講した観光デザイン学科の3年生は「夜景が好きなので今回の講義に興味があったのですが、観光ビジネスとのつながりが聞けて勉強になりました。夜景観光の仕事に女性が少ないのも意外で、仕事にも興味をもちました」と話していました。