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2024年8月5日
オープンキャンパス 大学

【情報科学芸術学部(仮称、構想中)】開学に向けた初の体験授業 AI研究者を講師に「ものの見方」の不思議さを考える

AI(人工知能)にはできない、人間であるあなたができることを探すことが、新しい学部の学びの基本です──7月21日の文京オープンキャンパスで実施した本学が構想中の新学部「情報科学芸術学部(仮称)」の初の体験授業。講師を務めた土井樹先生は、参加した高校1、2年生たちに冒頭、そんなメッセージを伝えて約30分の授業はスタートしました。

本学は2026年度開設に向けて「情報科学芸術学部(仮称、構想中)」の準備を進めています。デジタル社会に欠くことのできないデータサイエンス(情報科学)と、芸術家であった学祖・跡見花蹊の学びを受け継ぐメディアアート(芸術)双方の知識を身に付け、新しいものの見方や表現を生み出せる人材の育成を目指します。

東京大学総合文化研究科広域科学専攻特任研究員の土井先生は、新学部設置準備委員の一人で、AIや人工生命の研究が専門。サウンドアーティストとして音を使ったアート活動もされています。

土井先生はAIや人工生命を社会に実装するベンチャー企業にも勤務

 

今回の体験授業のテーマは、『ものの見方を生成する』。土井先生は、「私たちはどのように世界を見ているのか?」と書かれたスライドを示し、用意した映像を流す前に、受講者にこう語りかけました。

「これから、白い服と黒い服を着た人たちがバスケットボールをパスし合います。白い服の人同士で何回パスしたかを数えてみてください」

映像を見終えて、高校生たちに答えを求めると、「15回」に一番多くの手が挙がりました。そこで土井先生。「ところで、この映像にゴリラがいたのはわかりましたか?」

映像を再生すると、パス回しをする輪の中を、ゴリラの黒い着ぐるみが堂々と横切っていました。「エッー」という驚きの声が上がるなか、「なぜ見えなかったのだろうという感じですよね」と笑う土井先生。これが、インビジブル(見えない)ゴリラという心理学の実験映像であることを明かし、次の言葉を紹介しました。

「見る」とは、頭のなかに「イメージや考え」をつくること

「人間は目から入ったものをありのままに見ているのではありません。脳の中で生成した、イメージ化した映像を見ているのです」と土井先生。白い服の人の間でボールを何回パスしたかを数えることに目が行って、想像もしなかったゴリラの存在を脳が認知できなかったことを、わかりやすく解き明かしてくれました。

体験授業で使われた実験映像はこちら
https://youtu.be/vJG698U2Mvo?si=yrq_uz5scq3QaHrv
<錯覚の科学/ハーバード大学特別実験より>

 

GPTによる言葉の指示を受けて奇妙な動きをみせる人型ロボットの映像

 

次に、「人工知能とは何か」を説明。「言葉」を編み出すAIのひとつであるGPTにロボットの「身体」をつなげたら、一体どんな動きをするのか。土井先生が所属する研究室が取り組んでいるその研究の映像が披露されました。「ヘビのまねをして」という指示で、ぎこちなくクネクネと動き始めた人型ロボットに笑いが起き、脳や人工知能の不思議な世界に高校生たちは引き込まれていました。

「GPTのような、まるで人のように言葉を話すけれど身体を持っていないAIが、ロボットという身体を持ち動けるようになったとき、それは私たち人間とどれくらい同じなのかをぜひ考えてみてください」という土井先生の問いかけとともに体験授業は終わりました。

■なぜ、「ものの見方を生成する」なのか?

『ものの見方を生成する』という、抽象的で一見難しそうなテーマをあえて選んだことについて、土井先生は参加した高校生たちに理由を語りました。

「高校は、すでに答えがあるものを教えてもらう場所です。それに対して大学は、まだ答えが存在しないことについて、あなたの『ものの見方』をつくっていく場所です。常識的なものの見方は、GPTなどのAIで引き出せるようになりました。これからの社会で必要となるのは、その常識を超えた発想やものの見方ができる人です。情報科学芸術学部(仮称、構想中)は、データサイエンスという科学的な視点と、アートという芸術的な視点、この二つのものの見方や知識を学び、AIにはまだできないことで、あなたができることを見つけられる学部にしたい。そんな4年間を皆さんと一緒につくっていけたらと思います」

受講した高校生に体験授業の感想を聞きました。

▷埼玉県の公立高校2年生:GPTが考えた言葉でロボットを動かすという発想に驚きました。それが簡単にできるようになれば、人間はいらなくなるのではないか。そんなことを考えてしまうくらい興味深い授業でした。

▷跡見学園の高校1年生:高校から新しい学部の案内がきて、芸術に興味があるので参加しました。人間の脳の不思議さとAIの話が面白かったです。人文学部と併せて志望を考えてみたいと思いました。

▷埼玉県の公立高校2年生:AIに自我は生まれるのかといった話は哲学的で、理数系に苦手意識のある私も興味がわきました。AIの進化の現状が学べて発見の多い授業でした。

「情報科学芸術学部(仮称、構想中)」は4年間を都心の文京キャンパスで学ぶ、本学初の理系(工学系)学部です。開設に向けた情報は随時、大学ホームページなどで紹介していきます。

※設置計画は予定であり、内容などを変更する場合があります。