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岩田教授の百人一首特別講義 ~百人一首見立八景~

2018年6月2日

平成30年5月27日に新座で行われたオープンキャンパスでは、図書館展示室で学生協働による『第14回百人一首・跡見花蹊新収資料展』が開催されました。これにあわせて、展示を手伝ったかるた部の学生たちに対し、本学文学部人文学科岩田秀行教授が特別講義を行いました。
 
 
岩田:この百人一首は昨年平成29年度に新たに所蔵に加わった新しい資料です。まず資料を見てください。この歌は?
学生:天智天皇「秋の田のかりほの庵(いほ)の苫(とま)をあらみ わが衣手は露にぬれつつ」
岩田:するとここに描いてある絵は?
学生:天智天皇は庶民の生活に興味を持っていたので、庶民の暮らす「田」を詠んだ、と聞いています。
岩田:大変結構ですね。普通はそうなんですが、これは江戸時代の浮世絵なので、それを微妙に変えているんです。どこが変わっているでしょうか。
学生:??

百人一首2

岩田:では、この絵の鳥は何の鳥でしょうか?
学生:雁(がん)とか?
岩田:すばらしい! これは雁(がん)、「かり」です。お菓子にもありますね。
学生:落雁(らくがん)?
岩田:そう。落雁というのは雁が下りていくことをいいます。「秋の田の落鳫」となっています。「鳫」は「雁」と同じです。では、この字は?
学生:東?束?
岩田:惜しい! 実は、これは景色の「景」です。
学生:「富嶽三十六景」なんかの「景」?
岩田:そう! 北斎のは「三十六景」、こちらは「八景(はっけい)」です。「八景」ってわかりますか?
学生:きれいな景色とか有名な景色とか。
岩田:そうです。八つの有名な景色。
実は中国にオリジナルの八景があるんですが、それにならって、日本では「近江八景」というのがあったんです。つまり近江琵琶湖の周辺の美しい八つの風景ですね。それで、この絵の「落雁」というのは、そのうちの一つと関係しています。実は、「近江八景」に「堅田落雁(かたたのらくがん)」というのがあるんです。「堅田」というのは地名で、そこに雁が下りていく、という風景ですね。その「かたたのらくがん」を、ここでは「あきのたのらくがん」としています。
だから、このシリーズの描き方として、百人一首の中から八景にうまく取り合わすことができる歌、結びつけてぴったりくる歌を取り合わせて、その絵を描いたということですよね。それがこのタイトルの意味するものです。
学生:百人一首を見立て描いた八景?
岩田:そうです。秋の夕暮れに雁が田に降りる風景にぴったりする百人一首の歌と言えば……? 天智天皇の「秋の田の……」ですよね。しかも、「刈り穂」の「かり」が「雁」に結びつきます。それで、八景と百人一首とがうまく結びつきました。普通の天智天皇のこの歌の絵は、お百姓さんが稲を刈っているだけの絵ですが、ここでは、八景と結びついているので、田に降りる雁が描かれているというわけです。
江戸時代の人々はこうして、百人一首の教養の下地に加え、「近江八景」という知識をからめ、それらをうまく組み合わせて遊ぶ、教養と余裕があったのです。洒落てますよね。
そうするとこれは一枚ではなくて八枚あることになります。しかし、このシリーズの絵は、本学にあるこの一枚だけしかわかっていません。本当に珍しい絵です。それにしても、他の七枚が見つかって所蔵できたら素晴らしいことですね。あと、残った七つの景色は、百人一首のどの歌と結びつけるとぴったりくるでしょうかね? 皆さんも考えてみてください。
近江八景
 堅田の落雁 ― 秋の田の落雁 天智天皇 歌「秋の田のかりほのいほの……」
 三井の晩鐘 ―
 唐崎の夜雨 ―
 粟津の青嵐 ―
 矢橋の帰帆 ―
 比良の暮雪 ―
 石山の秋月 ―
 瀬田の夕照 ―

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